今回はタンパク質のリフォールディングやカップリング、抗体フラグメント化など様々な用途で使われている還元剤についてです。
還元反応には、酸化(S-S再生)を防ぐためのEDTAの添加、変性剤の添加、過剰な還元剤の透析やゲル濾過による除去が必要な場合も多いと思います。透析やゲル濾過の間にS-S結合が再生されてしまうことも多く、最近は固定化された還元剤も広く使用されています。
還元力TCEP > DTT > 2-ME > 2-MEA > Cystein
TCEP(Tris[2-carboxyethyl]phosphine)は(酸化に対し)最も安定な水溶性還元剤の一つで、使用pHが広い(pH 2-11)のが特徴。DTTに比べはるかに酸化還元電位が低いので(還元的なポテンシャルは大きい)、DTTの半分程度の濃度で済む。
DTTの最適pHは7.1-8.0(使用可能pH6.5-9.0)で水溶液中のタンパク質の還元には一般的に終濃度50-100mM、還元タンパク質の酸化保護には1-10mMで使用される。変性剤が存在しない条件下では抗体重鎖間の選択的な還元にも使用できる。
2-ME(2-Mercaptoethanol)はpH6-9で終濃度100mM程度で使用される。グラム陰性菌の可溶化バッファーやSDSサンプルバッファーにも使用される。強い刺激臭。
2-MEA(2-Mercaptoethanolamine)は抗体重鎖間の選択的な還元(終濃度50mM程度)に使用される。IgGやF(ab')2の還元で生じるrIgGやFabはヒンジ部に露出したSHを介して抗体カラムに使用されたり、酵素標識されバックグラウンド軽減のため使用される。
#77712 Immobilized TCEP, 5ml
#20490 TCEP・HCl, 1g
#20291 No-Weigh DTT (7.7mg DTT / Tube, 48 本入り)
#35602 2-ME (10 × 1ml amples)
#20408 2-MEA・HCl (6 × 6mg)
#77700 Reduce-Imm Reducing Kit (固定化還元剤キット)
Q1) 固定化されていると何が良いの?
Q2)TCEPゲルでの反応条件やゲルの量は?
Q3) なぜ反応に変性剤を加えたりするの?
Q4) なぜ反応に変性剤を加えたりするの?
Q1) 固定化されていると何が良いの?
A1) 通常、DTTやメルカプタンなどは対象分子に対し約20倍モル過剰が添加されます。低分子量ペプチドからの透析やゲル濾過による還元剤除去は分子量の差が小さく時間を要を要するためS-S再生が進んでしまう事も多いと思います。固定化する事でこの操作は不要になり、還元後すぐに次の操作に使用することも出来ます。
Q2)TCEPゲルでの反応条件やゲルの量は?
A2) TTCEPゲルによる低分子ペプチドの還元は殆どインキュベーション不要でカラムに通すだけ(2-3分)で充分な還元を行う事が出来ます。タンパクの完全還元の場合、1mg/ml以上の濃度でR.Tで1時間、0.5-0.9mg/mlでは45分、0.1-0.5mg/mlでは30分、0.1mg/ml以下では15分になります。2時間以上の反応はS-S再生が還元速度を上回るので避けて下さい。TCEPゲル使用量はサンプル量の1-2倍容が目安になります。
Q3) なぜ反応に変性剤を加えたりするの?
A3) 疎水部に埋まっているS-Sの場合、還元剤がアクセスできない場合があります。特にImmobilized TCEPのような担体に固定されている還元剤の場合、立体構造によっては、完全還元するためにはS-S結合を露出させる必要があります。TCEPは酸・アルカリ条件でも使用できるので、pH2.8-5またはpH9-11で変性させることでも収率を高めることも出来ます。(TCEPはpH2-11、TCEPゲルはpH4-9)還元率はEllman's試薬(#22582)412nmでの発色法で測定できます
Q4) 共存物質について
A4) Cu、Mg、Ag、Zn 等イオンを含む試料の場合、5-20mM EDTAの添加が必要になります。TCEPはDTTに比べてニッケル、コバルトによる影響は少ないようです。金属製の器具(スパチュラなど)は、活性が低下するため使用しないで下さい。 |