ペプチドの標識は、ペプチドとの相互作用を検出するアッセイ系の構築では、頻繁に行われる操作ですが、ペプチドの機能を維持するため末端への選択的な標識が必要になります。タンパク質のような大きな分子ではランダムな標識が分子の機能に与える影響は少なく、ビオチン標識やSH基の導入では充分な標識効率を得るため12倍〜20倍程度の標識剤を加水分解を考慮して添加することをプロトコルでも推奨しています。一方、ペプチドの標識では1-5倍モル過剰の標識剤の使用が推奨されています。
N末端 alpha-amine (pKa=8.9) と リシン epsilon-amine (pKa=10.5) による求核攻撃は、標識反応で使用される中性付近のpH
(NHS-EsterではpH7-9) でN末端アミンの方が反応性が高く、N末端に選択的に標識が行われます。ただし、標識剤が過剰に存在する場合にはリシン側鎖にも標識されるため、低分子のペプチドの内部にリシンが含まれている場合、N末端選択的な反応には試薬の添加量や反応時間の最適化が必要となります。また、反応pHを酸性側にシフトさせて、リシン側鎖のアミンの反応性を抑えてしまうのも有効とされます。
また、アルギニンの側鎖にあるグアニジル基のpKaは12.5で、基本的に中性pH付近での標識反応では利用されることは無いとされていますが、実際には試薬が高濃度で添加された場合やオーバーナイト(4℃)で反応させた場合など標識されることもあります。システインもNHSに対して反応性が確認されていますが、中間生成体が不安定で反応は進行しないようです。ペプチドへのビオチン化に関してはピアス社テクニカルリソース(TR0046.0)に記載があります。
文献としては "Peptide Biotinylation with Amine-Reactive Esters: Differential Side
Chain Reactivity", Brian T. Miller, Peptides Vol.18, No.10, p1585-1595(1997) で NHS-Biotin により標識したペプチドのHPLCとMS/MSによる標識部位の特定を行っています。 |